私が求めるブランディング。

散々ルイヴィトンとシュプリームを筆頭に昨今のロゴカルチャーを悲観的な目で見てきた筆者ですが、少し希望の兆しが見えました。2018年春のティファニーが打ち出したキャンペーン「Believe In Dream」はとても冷静に時代を見つめつつ、イヤらしさなしに新たな顧客を獲得したいというメッセージが伝わってきました。

ストーリーは映画「ティファニーで朝食を」になぞらえ、ニューヨーク五番街本店のショーウィンドウを眺めるパーカーにデニム姿の女優「エル・ファニング」がティファニーブルーに染まった街を舞台に、エイサップ・ファーグが手がけたティファニーオリジナル音楽とともにミュージカル仕立てで踊り出すというものです。

ティファニーときくと結婚式のときに初めて訪れる指輪屋さん、というイメージがあるのではないでしょうか。洋服を扱っているわけではないので、高級アパレルブランドと違い気軽に入れる雰囲気ではありません。ましてはストリートカルチャーが浸透した現代の若者たちにとっては、「敷居が高い場所」というか場違いなのではないかと、入るのに抵抗があります。

しかし今回のキャンペーンでは主人公はパーカーにデニムでティファニーを訪れ、さらには名曲「ムーン・リバー」がラップ調にアレンジされているではありませんか。ティファニーは世代を問わず、人種やカルチャーを全て受け入れ、どんな人たちでも歓迎します、と言わんばかりに。

There’s a #TiffanyBlue takeover in #NYC. Find out where with the link in our bio. 📸: @arnold_daniel

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さらに上手い!と思うのは同時にリアルでも同キャンペーンを行ったこと。メトロの入り口や信号、タクシーなどをティファニーブルーに染め上げ、ニューヨークという誰でも歓迎するイメージをティファニーのブランドイメージと結びつけました。もっというとミレニアム世代必須アプリ「インスタグラム」に自ら投稿したくなるような、自らブランドと関わりたくなるようなパイプを用意したということです。あの手の届かない、自分たちには場違いなティファニーから若者たちに手を伸ばしてくれた、歓迎してくれたと受け取れるのではないでしょうか。

しかし上手くやれば、しっかり顧客も付いてきます。2014年バーバリーのクリスマスキャンペーンで作成した動画の影響で売り上げが14%上がったというデータがあります。ロゴ商売では既存の顧客よりも新規顧客(若者)を優先したと思われていまします。二者択一的な方法ではなく、どの顧客も満足できるような方法を模索することが、私が求めるブランディングであり、ティファニーのキャンペーンのようなものが増えてくれることを切に願います。

HP
http://tiffany.com
https://burberry.com

文 / RYO KANEKO