2025年も12月、街はクリスマスムード一色になりました。1年の締めくくりの月に入り、みなさまきっと忙しく過ごされていることと思います。
日々のバタバタに年末の忙しさがプラスされるので、まずは健康管理、そして何事も早め早めにすすめることを心がけています。できるだけ明日へ残さないのが私の全力習慣です。
つい先日、『2025 新語・流行語大賞』の「年間大賞」に高市早苗内閣総理大臣の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれました。確かにあの会見、あの低い声、とてもインパクトがありましたよね。
ちょうどあの会見の時、私は旅行をしていて、一緒にいた旅仲間に「働いて、働いて、働いて……」のモノマネを即興で披露し、旅=遊びの真っ最中というのもあって、その言葉とのギャップに皆で大笑いしていたのを思い出しました。
と同時に、日本で初の女性首相の誕生に、「時代は変わった」という話にもなり、時代についていけるかしら?と少し不安にもなったのでした。
でも、政治や社会はどうあれ、結局のところ、自身は仕事も日常生活も、目の前で起こることに対して、一つひとつ対応するのに精一杯のまま、1年の終わりを迎えようとしています。
今できることを全力で、というのが心がけていることのひとつなのですが、今日という1日はOK!と満足できても、その先の目標みたいなものは見えにくくなっています。いわゆる、夢や希望の類です。それが歳を重ねるということなのでしょうか?それはちょっと寂しいので、もう少し見えない何かにあがきながら生きていたいと思う今日この頃です。
さて、今年最後にご紹介する映画は、夢や希望がいっぱいだった?思春期の自分を思い出し、また、私には子どもがいませんが、既に思春期の子をもつ親世代を超えた年齢になっているので、成熟した大人、理想の大人って?ということを考えるきっかけになる作品をご紹介させていただきます。

『グッドワン』
1月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー
監督・脚本:インディア・ドナルドソン
出演:リリー・コリアス ジェームズ・レグロス ダニー・マッカーシー
2024年/アメリカ/英語/89分/2.00:1/5.1ch/カラー/原題:Good One/日本語字幕:堀上香
提供:スターキャット/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
©2024 Hey Bear LLC.
公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/goodone/
Introduction(イントロダクション)
私がまず見入ってしまったのは、映画の舞台。湖と清流に抱かれたそれはそれは美しいキャッツキル山地でした。
そこはニューヨークのマンハッタンから車で2時間ほどの場所なのだそうで、そこにあるのは、あの摩天楼のイメージとはまるで真逆の自然豊かな風景です。
映画は大都会ニューヨークから始まり、車を走らせ、キャッツキル山地へと向かいます。
普通に考えれば、楽しいキャンプ旅行へ向け、皆気分も上がるはずなのに、はじめから何となく重苦しい空気が漂っています……。
主役のサムは17歳。青春真っ盛りの女の子のはず。でも、不思議な陰影がありとても大人びた印象に映ります。
旅のメンバーは、サムとサムの父親、そして父親の友人の3人。ちょっと変わったメンバーで、2泊3日のキャンプ旅行へと出発です。

大人になるって何なんだ?大人って何なんだ?
ちょっと複雑な家庭環境のせいなのか、まだ17歳なのに精神的に大人なサムとは違い、親である男同士はしっかりとお腹も出ていてどこからみても立派な中年のおじさんなのに、精神的には子どものまま……。
サムは「大人になって」という目線を黙って送りながら、二人の聞き役、世話役を全面的に引き受けています。
この二人の大人の男の姿、生き方、考え方は、この映画で描きたかった軸のひとつに間違いありません。
そして映画の世界でなくても、男はいくつになっても子どものまま、というのはよくある話……。
でもそれも、私くらいの年齢(多分、この映画の父親の設定年齢よりも年上の私)からすると、なんだかとても愛おしく、可愛らしくもみえてきます。
そして、男女に関係なく、大人になれない大人に共感する部分も多々あり、その反面、この17歳のサムのように、モラトリアムも経験したことがある自分もいるので、勿論サムへの共感もあります。
みる角度によって、捉え方、感じ方のまったく違う作品なので、終始心がチクチクしてしまいました。

感情の余白をどう解釈するのか?それは観る者に委ねられる
物語のラスト、父親に対してずっともやもやしていた気持ちを表現するために、あるいたずらを仕掛けるのですが、それに一体どんな意味があるのか?物語の余白みたいなもの、感情の余白みたいなものは、映画の余韻として残されたままエンディングを迎えます。
なぜだか私は心の中で、「がんばれ!がんばれ!」とサムにエールを送っていました。
多分それは、環境やかたちは人によって違うけれど、誰もがきっと経験したことのある、大人になるために必要なステップであるように感じたから。
そして、なぜだかとても、亡くなった父に会いたくなりました。
17歳の私には、いや、だいぶ大人になった私も、父と過ごすこんな時間がもてなかったなと、映画の中のサムがとても羨ましくもなりました。
こんなふうに郷愁の念を抱かせてくれる作品に出会えたことに心から感謝。
映画ってやっぱりいいものですね。

