コロナ禍に思う人生100年時代の生き方~「セルフメディケーション」について考える~

Beauty Museumライターの根津孝子です。 ここ数日、日本における新型コロナウイルスの感染者は急激に減りましたが、未だ緊急事態宣言が解かれることはなく、現状5月末までを予定していて、基本的には外出自粛生活が続いています。

そんな中私は、5月11日(月)ゴールデンウィーク明け初日のこと、どうしても外せない用事があり、約1か月半ぶりに地下鉄に乗って、大手町(東京駅界隈)へと向かいました。

殆ど人のいない東京駅

この日の東京は、まだ5月だというのに季節外れの暑さで気温が30℃以上もあり、正直、マスクが息苦しくて……、それでも地下鉄の中では、「マスクOK!つり革、鉄棒に触っちゃダメ!」と過剰なくらい自分にいいきかせて神経を使っていたのですが、用事を済ませるため、大手町~丸の内~銀座へと向かって歩いている途中、暑さによる不快さも手伝って、だんだん私は苛立ちを覚えました。

「人、殆どいないのに、マスクして歩いている私って何なの?」「そもそもマスクって何のためにしてるんだっけ?」「人に飛沫を飛ばさないためだよね?」「人からの飛沫を浴びないためだよね?」「エアゾルを吸い込まないためだっけ?」「んー、今ここでマスクをして歩いている必要ってあるのか?」と。

でも、たまに道ですれ違う人たちも皆マスクをしています。そうすると、「やはりしていた方が無難だな」と、外すタイミングを逃し、結局、息苦しいなと思いながらも家に帰りつくまでマスクをしたままでした。

殆ど人のいない丸の内

家に帰りつき、マスクを外してほっと深呼吸をしながら、「私、現在50歳。日本は人生100年時代が到来した、などと最近よくいわれているけれど、死ぬまでに私、マスク何枚使うんだろう?」なんてことを考えながら、コロナ禍と「セルフメディケーション」について思いを巡らせたのです。


コロナ禍で高まる「セルフメディケーション」の意識。

セルフメディケーションとは、「自己治療。軽い病気や怪我 を医師の治療を受けることなく、買薬などを使って自分で治療すること」や、更に広い意味で、「自分で自身の健康を管理する」「自分の健康は自分で守る」という概念を持つ言葉として根付きつつあります。

この言葉の前提にあるもの、それって「予防」ですよね……。

新型コロナウイルスの発生により、マスクや手洗い、うがいだけでなく、様々な病気に対する予防の意識が高まったと私は思っています。

例えば、新型コロナウイルスによる死亡リスクが、糖尿病や心臓病、ガン治療による免疫力低下等によって高まるとわかったことで、この先、できるだけ糖尿病になりたくない、心臓病になりたくない、ガンになりたくないと思い、じゃあどうすればそれが予防できるかと、これまで以上に考え始めた人も多いのではないでしょうか。

もっといえば、人はいつか死ぬわけであり(それは病気が理由でない場合もありますが)、じゃあ、いずれは病気になるという覚悟を持ちつつ、でもどうすればその時期をできるだけ遅らせることができるか、ということを自分なりに対策しながらこの先の人生を送ろうと考えている人が多いのではないでしょうか。

これって、“怪我の功名”とまではいいませんが、もしかしたら、人生100年時代の生き方を正しい方向へ導いてくれているようにも感じます。

実際に起きている「病院離れ」の意識。

ここ2、3か月、私の身近にいる高齢者たちは、新型コロナウイルスの院内感染のニュースを目にしているので、持病があっても「今はできるだけ病院に行きたくない」とよくいいます。“できるだけ”なので、持病があれば治療のために行くしかないのですが、その気持ちはわかりますし、実際、かかりつけの病院で、患者の症状に大きな変化がみられない場合や常用している薬が変わらない場合、これまでよりも多目に薬を処方してくれるそうで、できるだけ病院へ行く頻度を減らす措置をとっている病院もあるといいます。

これは、現状、患者側の気持ちだけでなく、医療従事者の負担を減らす、という意味もあると思いますし、また病院の様子を鑑みて、ガンの手術などが先延ばしされているケースもあると報道されていました。そんなことを知ると、益々今は病院にかかりたくない、と思ってしまうのですが……。

では例えば、私のように持病がない人(自分ではそう思っている)が、急な体調不良になった場合はどうでしょうか?

それが今であれば、新型コロナウイスルの症状とは明らかに違う、と思ったら、なんとか自力でOTC医薬品(薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品)を使って治そうとするだろうと思いますし、そもそも体調不良にならないために、予防のためのサプリメントを飲むようになったり、これまで以上に睡眠や食事に気を使うようになったりするかもしれません。

また、小さなお子さんがいる親はどうでしょうか?

これまでだったらちょっとした子どもの体調不良ですぐに病院へ連れて行っていたのに、「もう少し手持ちの薬などで様子をみてみよう」と、できるだけ病院にかかることを避けるようになるかもしれません。

そうして様子をみたことで、もしもきちんとお子さんの症状が治まれば、プラスの体験として蓄積され、もしも次に同じような症状が出た場合、もう病院へは行かなくなります。

またいうまでもなく、とにかく子育て中の親は自分自身が元気でいる必要がありますし、きっと、今回のことで、子育て世代の親たちは今まで以上に自らの健康に気を使う生活をしていることでしょう。

もしもそういった各世代一人ひとりの健康意識の高まりが、この先の日本社会で継続し続けたとしたら、マスクが世界のニューノーマルになったのと同じように、「病院離れ」が日本におけるニューノーマルになるのではないかと思うのです。

定期的な歯や歯周のメンテナンスは様々な病気の「予防」に有効。

前述した、「病院離れ」という話に例外があるとすれば、もっと定期的に通うべき医療機関がひとつだけあって、それは「歯医者さん」であると私は常々思っています。

自分のことを言うと、新型コロナウイスルの感染拡大がこれまでの生活を一変させる事態に陥ってから、やはり、できるだけ病院にかかりたくないと思い、「では現状、私が定期的に通っている医療機関ってどこだ?」と考えた時、それは、3ヵ月に一度、歯のクリーニング(PMTC: 毎日の歯磨きだけでは取り除けない汚れや歯垢を、歯科医院にて専門家が取り除く治療。)のために通っている、歯医者さんだけでした。

歯科医療は新型コロナウイルスの感染リスクが高いとされ、緊急を要しない患者の治療を先延ばしにしてもらっているといいますが、私は予防のための通院なので、それがすこし先延ばしになっても問題はありません。

でもこれが、緊急を要する「歯の痛み」だったら、我慢できずにきっと行きますよね……。それくらい歯の痛みというのは不快で我慢にも限界があるものです。

私は今改めて、歯医者さん以外の医療機関に通う必要がないくらい健康であることに感謝するとともに、それは25年以上続けている習慣なのですが、定期的に歯のクリーニング(PMTC)のために歯医者さんに通っていてよかったと感じています。

最近になって、歯周病など、口の中の病気の予防が生活習慣病の予防になるという話をよく聞きます。

私は専門家ではないので、難しいことは聞きかじった程度のことしかわかりませんが、身をもって感じるのは、「歯周病」や「虫歯」など、口の中の病気というのは他のどんな病気よりも予防しやすい病気なのではないか、ということです。だって要するに、よごれを落とし、清潔にしておけば予防できるのですから。

現に、50歳にもなると歯周病などの悩みを持つ人が殆どだと聞きますが、私はもう25年以上も虫歯になっていませんし、歯周病とも無縁の生活を送っています。もちろん、定期的な歯医者さん通いと、毎日の丁寧な歯みがき習慣の両方が予防には必要ですが、それも慣れてしまえば何てことはありません。

また、ガン治療の際、重度な歯周病があると受けられない治療があるということを最近聞きました。もしも命に関わる病気になった時、歯周病があるためにその治療を受けられないとなると、そこにはきっと「後悔」しかありませんよね。

身近にいる高齢者もやはり、「若い時からもっと歯を大切にしておけばよかった」とよくいっています。

本当に人生が100年あるとしたら……。

私は医療の専門家でもなく健康オタクというわけでもないので、想像の部分も多く日本におけるセルフメディケーションの未来についてつらつらと書かせていただきましたが、実のところ私は長寿願望があるというわけではありません。そこそこの年齢で、人さまに迷惑をかけないうちに、“ピンピンころり”が理想であると思っています。

でも自分の人生の終わりは自分では決められないもの。もしかしたら本当に100年あるかもしれません。それを思うと正直少し恐怖でもあります。

しかし、であればできるだけ長く自分の足で歩き、自分のことは自分でできて、美味しく口から食事ができる人生を送りたいとも思っています。

それはきっと、誰もが願っていることでしょう。

そして、人生100年時代の「セルフメディケーション」とニューノーマルに思いを巡らせた時、そのひとつが「予防のために歯医者さんへ定期的に行くこと」、これはあって然りだと思うのです。

日本から新型コロナウイルスが去り、日常を取り戻したら、ぜひ、通いやすいご近所の歯医者さんの扉を開けてみてはいかがでしょうか。