夢のつづきを叶えるために、New Yorkの小さな映画館へ

私のニューヨークの旅は続いています。旅の途中に友人から、「ニューヨークの都会度は東京と違いますか?」というLINEメッセージが届きました。どうでしょう?

例えばマンハッタンの”五番街”を歩いていると、一つひとつのお店の広さ、そして規模は、ニューヨークの方が圧倒的に大きいのだけれど、どこか東京の”銀座”に似ているな、とも思います。(そこにひときわ目立つ、キラキラとした鏡張りの大きなビル、”トランプタワー”があることを除いては。)

私はこう返事をしました。「もしかしたら、ここはニューヨークなんだ!という気持ちからくる違いが大きいのかもしれませんが、やっぱりスケールの大きさは東京より感じます。」と。

でも、今回の旅で私がニューヨークに求めたものは、ニューヨークらしさやニューヨークのスケールの大きさを感じることではなく、夢を叶えた人の軌跡を辿ることだったのです……。

もう少しだけ、私の旅行記にお付き合いいただけると幸いです。

映画「二郎は鮨の夢を見る」とニューヨークの深い関わり

読者の中には、映画「二郎は鮨の夢を見る」(Jiro Dreams of Sushi)を観た人がきっといることだろう。この映画は2011年に公開された、デヴィッド・ゲルブ (David Gelb) 監督によるアメリカ合衆国のドキュメンタリー映画で、ニューヨークの単館映画館の2か所で公開されたことがきっけとなり、またたくまに話題となって世界中へと広がった。

私は著書『「すきやばし次郎」小野禎一 父と私60年』で、この映画の撮影秘話などについも触れている。

私は、聖地巡礼ではないけれど、この旅でこの小さな2か所の映画館に自分が書いた本を届けることを決めていた。会ったこともない人たち、行ったこともない場所だけれど、いちすきやばし次郎のファンとしてお礼を言いたかったのだ。けれど、そのうちのひとつは残念なことに2018年に閉館してしまっていた。そこで残された一つの映画館へと足を運んだ。

運命を変えた小さな映画館「IFCセンター」

その一つは、「IFCセンター」という映画館で、位置的にはマンハッタンの最南端に位置する地区に近く、「ダウンタウン」とも呼ばれるところにあった。

その地を訪れて改めて驚いたのだが、正直、周辺の雰囲気もマンハッタンの中心部からは想像もつかないくらい華やかさに欠け、映画館も想像以上に古く、気を付けていないと通り過ぎてしまうくらい小ぢんまりとしていた。

ただその街や映画館の佇まいを目の前にし、ここからあの映画が始まり、世界中に広がったのかと思うと、いかにあの映画が観る人の心を動かす映画だったのか、ということを改めて知った気がした。

そして間違いなく私自身もあの映画を観て強烈に心を動かされた一人であり、小野禎一さんの人生、父として、師匠としての二郎さんとの関係を本にしたい、という思いを抱き始めたきっかけとなったのだ。

私はガラスの扉を開け中に入ると、すぐそこにいた愛想よく映画のチケットのチェックをしている従業員の男性に事情を説明した。そして持参した著書の表紙をみせるとすぐに、彼は「これは、日本の鮨シェフ、JIROだね、よく知ってるよ。映画もここで上映したんだ、君のリクエストはわかったよ。今日、僕のビッグボスはここにいないけど、明日来るから必ず渡しておくよ、僕にまかせておけ!」といって、とても快く、本と手紙を受け取ってくれた。

そして諸々話が終わった後、映画館の売店で買い物をしていると、再び、「必ず約束するからね、僕に任せて!」と声をかけてくれ、私は一仕事終えたような清々しい気持ちでその小さな映画館を後にした。

次回ここを訪れる時は、翻訳された私の本をプレゼントしよう、という大きな夢を心に抱きながら……。そしてあの名曲、「ニューヨーク、ニューヨーク」を鼻歌でうたいながら……。