【エッセイ×根津孝子】気分を変えてくれた絵ハガキたち~暑中お見舞い申し上げます~

気が付けばもう7月も半ば……。よく「君、暇でしょ?」と、言われがちな私ではありますが、強く否定もできませんし、強く肯定もできない、というのが私の日常です。

忙しい、という感覚にはとても個人差がありますしね(←言い訳?)。

そんな私ですが、正直ここのところ本当に忙しくて、多分、それは誰であっても忙しいと感じるレベルでの忙しさで、「このままの勢いで、今年の夏を乗り切ってやる~!」と、有難いことに身体は元気なことにまず感謝です。

そして気力の方はといえば、こちらは日々、いや、一日の中でも変化します。気力の部分はほんと、ややこしいです。自分でも予測できません。

そして、忙しい時に限って何か他のことをしたくなる、という変な性分があって、なぜ今?というような所へわざわざ出かけて行ったり、普段みないようなテレビ番組にかじりついたり、一見すると無駄な時間を、全力で費やすこともしばしばです。

けれど、この行動が案外よい発見、経験、知らなかったことを知れたり、感じたりすることにつながるので、結果、後から決して無駄ではない時間だったとも思います。

特にここ数日は、安倍晋三元首相が銃撃され、亡くなられたニュースをテレビでよく観ていました。みなさんご存知の通り、犯人の証言から、旧統一教会について話題になっています。

私がみていた番組では、コメンテーターとして、旧統一教会のことに詳しい、弁護士の紀藤正樹さんがこの宗教について様々な説明をされていました。

その説明にはいろいろな意味でリアリティーがあり、前日にニュース等でみていた、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の会長が行った会見では読み取ることのできなかった内容でした。

ちょうど私が高校を卒業し、東京にでてきた頃(1990年頃)、よくその布教活動や霊感商法のことが話題になっていて、渋谷駅周辺で信号待ちをしていると、声をかけられることがあるという噂を、学生の時、耳にしていたのを思い出しました。

あれから、30年以上が経ち、その宗教団体の名前が私の記憶の片隅に残っていたとはいえ、日常生活で思い出すこともなく過ごしてきました。

その一方で、こうして何事かが起こると、そのことに詳しい人が必ず登場します。今回のことでいえば、紀藤正樹弁護士のような人です。

その道の専門家、というのは、その間ずっと、その団体のことを追い、調べ、関わって過ごしてきた人です。それってなんだか仕事とはいえ私にとってはすごいことだなぁと、テレビをみていて不思議な気持ちになりました。

そんな知識や経験の蓄積を、短いテレビ番組の中で視聴者に伝えてくれる存在ってとても有難いとも思いました。勿論、それを聞いて全てを知った気になってはいけない、というのは別問題の話ですが。

番組が終わり、時間について想いを巡らせました。その宗教に入信した人の30年、弁護士としてその宗教が起こした事件にずっと関わってきた人の30年、私のような人間の30年、あたり前のことですが、皆平等にある30年でも全く違う30年という時間……。それはとてもとても長い時間です。

いろいろ考えていたら、いろいろわからなくなって、PCに向かっても仕事が手につかなくなり、ならば机の引き出しでも整理するか、と思いついて、ゴソゴソと整理整頓を始めました。

すると、引き出しから忘れかけていた絵ハガキが出て来て思わずほっこり。

「あ、こんなの買ってあったじゃ~ん♪」と。

この絵ハガキは少し前のこと、その時も急に「長谷川町子美術館」へ行こうと思いつき、美術館の売店で帰りに気に入って買った、サザエさんの絵ハガキでした。

その時、時期が来たら、暑中お見舞いを書こう!と一目で気に入った絵ハガキだったのですが、すっかりそのことを忘れ、引き出しにしまいこんでしまっていました。

私は昭和45年生まれ。確かにこういうサザエさんの絵の風景というのはアニメとしての懐かしさはあるのですが、生活としては少し前の世代の話のような気もしながら子供の頃、日曜日の夕方には毎週欠かさず観ていました。

この絵ハガキの雰囲気もいかにもサザエさんらしい、平和な気持ちになれる絵のような気がしています。

けれど今、この絵ハガキを眺めながら、当時のことを思い出しています。やっぱりいつの時代も、日曜日の夕方、サザエさんが始まる前に、テレビは不幸なニュースを伝えていました。時には、想像を超えるような悲しいニュースも……。

わかりきったことですが、100%良いニュースだけなんていう時代はないのですね。世界、日本、社会、個人の生活の全てにおいて。

この机の引き出しにしまっていた絵ハガキが、私の気分を少し変えてくれました。

これから私はペンをとり、この絵ハガキに向かいたいと思います。

暑中お見舞い申し上げます。

みなさんは、どんな夏をお過ごしですか?