
■2025年第97回アカデミー賞Ⓡ助演女優賞受賞!弁護士役を演じたゾーイ・サルダナ。
今年も、ロサンゼルスで3月3日にアカデミー賞Ⓡの授賞式が開催されました。映画ファンであれば、この映画の祭典を毎年楽しみにしている人も多いことでしょう。
日本の場合、良くも悪くも、配給映画公開のタイミングは発表後、という作品が多いので、受賞結果を知り、「これは観てみたい!」という映画に出会うこともしばしば。
そういった意味でも本作品は、今回のアカデミー賞Ⓡ最多12部門、13ノミネートという大注目作品。結果は、見事、ゾーイ・サルダナが助演女優賞を受賞。そして、歌曲賞も受賞しました。
ゾーイ・サルダナといえば、ジェームズ・キャメロン監督の超大作「アバター」、そして、「スター・トレック」があまりにも印象的で、何となく私の中では、SF映画の中に登場する芯の強い女性、というイメージが強かったのですが、実はダンサーという顔を持っていたのですね!知りませんでした。
歌曲賞を受賞した音楽に合わせて魅せる、ゾーイ・サルダナのそのキレッキレのダンスには、本当、驚きました。

■興味深いのは、メキシコの麻薬カルテルを舞台にしたストーリー展開であること。
少し話はそれますが、ここ数年NetflixやAmazonプライムなど、動画配信のサブスクを楽しむ機会が増え、「海外のドラマやドキュメンタリーにはまった」という話をよく仲間とします。
互いにそのタイトルを教え合い、観てみるのですが、とても面白いと思ったり、全く思わなかったりと、感想は人それぞれ。感性は十人十色。合う、合わないがあって然りです。
そんな中、面白いのは、動画配信のサブスクを利用するようになってから、自分の好みの傾向がハッキリとわかってきたこと。
自分でも意外だったのですが、私が惹かれるのは、事実に基づいたドラマや宗教色が強い作品。
そして一時期、そんなドラマを見過ぎてしまったがゆえに、妄想力が高まり、たとえそれがフィクションであっても、「これ、本当にありそうな話だわ」と思ってしまうという後遺症に現在もかかっています。
作品の例を挙げるならば、Netflixで観たドラマ、「ナルコス」や「EL CHAPO」(エルチャポ)、「クイーン・オブ・ザ・サウス ~女王への階段~」などがそうなのですが、これらは全て、麻薬カルテルを題材にしたドラマです。
本題に戻りますが、今回ご紹介する映画、『エミリア・ペレス』は、まさにそのメキシコの麻薬カルテルを舞台にした映画。
私の場合、そんなわけで予習がしっかりとできていたので、その世界観やストーリー展開に、何も違和感を覚えることはなく、「これってもしかして実話がモチーフ?」と、むしろ疑うほどでした。
しかしそこはさすがの話題作、とてもよくできた物語です。人種差別、ジェンダー、女性の地位向上など、みどころが沢山つまっています。

■主役、エミリア・ペレス役を演じたのは、トランスジェンダー女性として史上初アカデミー賞Ⓡ主演女優にノミネートを果たした、カルラ・ソフィア・ガスコン。
主演のカルラ・ソフィア・ガスコンは、自らが演じたエミリア・ペレスの人物像について、「美女と野獣が同じ身体に閉じ込められてしまったような存在」と表現しています。また、自らの人生観として、「何かを手に入れるためには、他のものを諦めなければならない」という話を、本作品に関わる取材の中でしています。
使い古された言葉ですが、“自分らしく生きる”ということが、この映画の大きなテーマのひとつ。
自分らしく生きる方法を手に入れた時、得たものとは?諦めたことは?
そして、他の誰でもなく、自身の心と永遠の約束ができますか?
映画を観ながら、「結局、自分らしさって何なのだろう?」と、思うとともに、いろいろ頭で考えても、結局、人間には感情というコントロールし難いものがつきまとい、ほんの少し、そう、ほんの少しの選択を間違えただけで、望まない方向へいってしまうこともあるわけで……。
この映画の主人公のように大げさなことではなく、私たちの日常にだって、そんなことはよくあるわけで……。
そういう人間の愚かな部分を、観る者に、とにかくストレートに教えてくれます。

■奇才な監督ジャック・オーディアール。ミュージカルだからこそできた感情表現と余韻。重要な脇役、情熱的な大人の女性を演じきったセレーナ・ゴメスにも注目!
本映画の監督は、フランスを代表する映像作家、ジャック・オーディアール。これまで世に送り出したすべての作品が、国際映画祭で高く評価されてきました。
カンヌ国際映画祭では、脚本賞、グランプリ、パルム・ドールを受賞。本作においては審査員賞に輝き、近年、『ゴールデン・リバー』では、ヴェネチア国際映画祭監督賞とセザール賞監督賞も受賞。30年に及ぶキャリアを誇る、素晴らしい監督です。
しかし、もしかすると本作品においては、映画界、エンタメ界に、かつてない世界観で、全く新しい作品を生み出したのだから、これまでの作品やキャリアなどはどうでもいいことなのかもしれません。それくらいの斬新さと新鮮さを感じました。
映画を観る前、あらすじを読んだ時、「なぜ、このストーリーをミュージカル仕立ての映画に?」と、正直思いました。でも観ればその理由がわかります。
これまで観てきた、どのミュージカル映画とも違う、ジャンルを超えた、独特な印象を受けました。そういう視点からも、映画ファン、ミュージカル映画ファンをきっと楽しませてくれることでしょう。

【ストーリー】
リタ・モラ・カストロ(ゾーイ・サルダナ)は優秀な弁護士。その能力をボスに利用され心をすり減らす毎日を送っている。明らかに罪を犯した男たちが、金の力で裁判を動かし無罪放免される現実に怒りを募らせていた。そんなリタに、メキシコ全土を恐怖に陥れる麻薬カルテルの冷酷なリーダー、マニタス・デル・モンテ(カルラ・ソフィア・ガ スコン)から驚くべき依頼が舞い込む。それは、莫大な謝礼と引き換えに、「女性としての新たな人生を極秘に用意してほしい」という依頼だった……。
★『エミリア・ペレス』公式ホームページ https://gaga.ne.jp/emiliaperez/about
★2025年3月28日(金)より全国ロードショー https://gaga.ne.jp/emiliaperez/theater/