マヨルカ島からの便り ~三ツ星シェフが新型コロナウイルスの入院患者と医療従事者へ料理を贈った日~

マヨルカ島一番の観光名所『パルマ大聖堂』

Beauty Museumライターの根津孝子です。私の住む東京、原宿界隈は、緊急事態宣言が出されて以降、シンと静まりかえっています。ここに住み始めてからもう何年も経ちますが、街のそんな景色をみるのは初めてです。

今、世界各国は、新型コロナウイルスという見えない敵と戦っています。私がみてきたこれまでの世界というのは、経済、文化、宗教、歴史的背景、習慣など、あらゆる視点において、例えばそれが表だった戦争ではなかったにせよ、いつもどこかで国同士が敵になったり味方になったりというのを繰り返している世界でした。

しかし今、1対全ての感染国、(1はコロナウイルスという敵)という戦いをしています。

連日報道される世界における新型コロナウイルスのニュースをみながら、これまでの私は、世界とか、地球とか、そういう規模で真剣に物事を考えたことがなかったなとつくづく感じています。時代が巡る中で、とんでもない時に自分の人生が居合わせたものだと感じることもあります。なぜ今なのよ、と我儘な悲しみと苛立ちを覚えることもあります。

みなさんは今、どんなことを考えていますか?

きっといろいろな事を考えながら、不安と闘いながら過ごしていると思います。そして、この1の敵に必ず勝たなければならない、ということだけは、世界中の人が思っているに違いありません。

私は、スペインはマヨルカ島に暮らす友人に連絡をとりたくなりメッセージを送りました。「そちらの様子はどうですか?よかったら、Beauty Museumの読者に、そちらの様子を届けてくれませんか?」と。

パルマ大聖堂

彼女の名前はMikaさん。私と同世代で、互いに30代の頃、東京で切磋琢磨し合った仕事仲間です。当時の私たちは営業職で毎日数字を追いかけていました。

そんな彼女は、8年前にスペイン人の男性と結婚。もうすぐ5歳になるお子さんがいます。

子育ての合間に、日本語教師として仕事もしています。当時からは想像もしていなかった人生を歩んでいます。

状況が状況なので、どんな返事が戻ってくるのか少し不安な気持ちで待ちました。

すると、思っていたよりもうんと早く返事が戻ってきて、そこには、期待していた以上の内容の原稿が添付されていました。そういうところがやはり、MikaさんはMikaさんのままで、改めてすごい人だなぁと思いました。

スペインはマヨルカ島に住む、Mikaさんからの便りをお届けします。。。


スペインは今、セマナ・サンタ(聖週間)で、キリスト教の祝日が続く5連休中です。

大型連休という点では、日本のゴールデンウィークのような感じかもしれませんね。

木曜日はキリストが最後の晩餐をした日、金曜日はキリストが十字架にかけられた日、そして、日曜日はキリストが復活した日で、その翌日の月曜日もイースター・マンデーといって祝日なります。

毎年、日にちは変わりますが、木曜日から月曜日までで、今年は4月9日(木)から4月13日(月)までがセマナ・サンタ(聖週間)です。

セマナ・サンタ(聖週間)には、キリストが十字架を背負って歩いたのを再現して、各教会のキリスト教信者が総出で街を歩く宗教行事があります。それが本当にびっくりするほどの大行進で、先頭から最後尾まで見ようとしたら、夕方から夜中までの何時間にもわたるくらいの長さなのです。

毎年それを見に行く人たちも大勢いて街は人混みになるわけですが、今年は、新型コロナウイルスで外出禁止の真っ只中、行事は中止になってしまいました。

これは、私が初めてセマナ・サンタのプロセシオン(行進)をみた時に撮った写真です。

雰囲気だけでも。。。

新型コロナウィルスの影響で今年は中止となったセマナ・サンタのプロセシオン(行進)

セマナ・サンタ(聖週間)には、テレビもキリストに関する映画やドキュメンタリー番組など盛り沢山になるのですが、今年は新型コロナウイルスのニュースにかなり占領され、少なくなっています。

メディアでは、数時間毎に感染者数だけでなく、国の政策、街の状況、スーパーの営業時間まで、細かい情報が流され、そしてそれが目まぐるしく変わるので、ニュースから目が離せない日常を送っています。

4月8日、日本でも一部の地域に緊急事態宣言が出され、外出の自粛をしている人が沢山いると思いますが、スペインでは、3月14日の夜、ペドロ・サンチェス首相がテレビで非常事態宣言をし、まずは2週間の外出禁止となりました。その後、2週間が4週間になり、4週間が6週間になり、2週間ごとに延長され、現在は4月26日(日)までとされています。

街は、薬局とスーパーだけ営業していて、買い物に行くことは許されています。それから、銀行のATMへお金を引き出しに行くのも許されていますが、スーパーから、「現金ではなくカードで支払うように」と通知があり、実際には、現金を使う機会は殆どありません。

スーパーについては、支払い方法だけでなく、いくつかのルールが定められました。

1メートルずつ間をあけて一人ずつ入ることになり、入口に立っている警備員が「はい、次の人どうぞ」とコントロールしています。

人とのスペースを守り、スーパーへの入店を待つ人たち

入口には使い捨てのビニール手袋と消毒液とティッシュペーパーが設置されていて、入る前に手袋をします。そして、その手袋にウイルスが付着しないよう消毒液を付けます。

また、ティッシュペーパーに消毒液を付けて、カートの持つところを拭き取ります。

この入る前の一連の流れを警備員が監視しています。

開店前や昼食前など、時間帯によっては、入口からずいぶんと遠くまで長蛇の列です。レジで支払う際も、1メートル間隔の列で、レジの女性とは透明のビニールカーテンで仕切られています。

今は、そんな制約の多い日常を送っているのですが、仕方がありません。

そんな中、先日、心温まるニュースがひとつありました。

先月、マドリードの病院がどこも満杯になり、一般のホテルに新型コロナウイルスの感染者を入院させていたのですが、その後、イフェマ(IFEMA)というイベント会場の敷地にプレハブの病院を建設したのです。それが先月下旬のことになります。この病院は、いずれ取り壊されますが、広さでいうと現状、スペイン最大の病院です。

その病院で、ミシュラン三ツ星シェフのアンヘル・レオン氏(ÁngelLeón)が、患者と医療に従事している人たちにお料理を提供したのです。

テレビのニュースで、トマトソースのパスタが映ったのですが、後で新聞記事を見たら、魚のパスタと書いてありました。そうそう、このシェフ、よくテレビに出ている、海の幸を使う料理で有名なシェフだと知ったのでした。

このイフェマ(IFEMA)以外のいくつもの病院にも提供したようで、その数は3万人分。セマナ・サンタ(聖週間)のお祝いで、お料理を届けたと報道されていました。

今年のセマナ・サンタ(聖週間)の予定は、新型コロナウイルスでキャンセルになりましたが、来年は、あらためて計画を立てて、楽しい連休になればいいなと思います。

一日も早く感染が終息するよう願っています。

また、スペイン、マヨルカ島からお便りしますね!

Mika(スペイン在住8年)

本来であれば、ヨーロッパのビーチリゾート地としても人気のマヨルカ島

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