【エッセイ×根津孝子】2024年9月27日(金)公開映画『憐れみの3章』~そのストーリー、あなたならどう解釈する?~

2024年8月、夏真っ盛り。連日猛暑が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

今年はパリ五輪と猛暑も手伝って、テレビの前でゆっくり夏休み、という方が多いかもしれませんね。私もそんな一人であります。

そして、暑い時の娯楽としておすすめしたいのは映画鑑賞。この夏も夜な夜な映画館へ足を運び、「キングダム4」「インサイド・ヘッド2」など、話題作を楽しんでいます。夜な夜な、と書きましたが私はレイトショーが好き。映画は私にとって夜の娯楽です。

日付が変わるくらいの時間に映画を観終わって帰る道々、大人って最高!と思うのです。

「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンと、今世界が最も注目する監督ヨルゴス・ランティモスがタッグを組んだ最新作。

そんな私が今回ご紹介する映画は、2024年9月27日(金)公開の映画、『憐れみの3章』。

夏の娯楽映画とは一線を画す、という表現がぴったりの話題作が、いよいよこの秋公開です!

©2024 Searchlight Pictures

手掛けたのは、あの、ヨルゴス・ランティモス監督。

ランティモス監督といえば、2023年に公開された前作映画、『哀れなるものたち』でヴェネチア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞。アカデミー賞でも作品賞ほか11部門にノミネート。主演を務めたエマ・ストーンは、同作品で『ラ・ラ・ランド』に続く2度目の主演女優賞を受賞、計4部門で受賞を果たしました。

ヨルゴス・ランティモスの名を知らなかった人でも、動画配信サイトで『女王陛下のお気に入り』というタイトルを目にしたことがある人は多いかもしれません。これも2018年、ランティモス監督の作品で、ヴェネチア国際映画祭で審査員大賞、主役のアン女王を演じたオリヴィア・コールマンは、アカデミー賞主演女優賞を受賞しています。

2024年度新記録達成!北米大ヒットスタート。

公開に先がけて5月に開催された、第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に招待されていた本作品で、ジェシー・プレモンスが男優賞を受賞。

待ちに待った北米公開の6月21日。ニューヨーク、ロサンゼルスの5スクリーンで公開し、週末の3日間で興行収入35万ドルを集め(DEADLINE誌 調べ)、2024年度公開作品中、新記録となる館アベレージ7万ドルの特大ヒットスタートとなった本作品。

独立記念日の連休となる7月4日の週には、1,000スクリーンを超える劇場での拡大公開も決定。

9月27日、日本での公開へ向け、その期待がますます膨らんでいます。

奇想天外、摩訶不思議!観る者を初体験ゾーンへと導くヨルゴス・ランティモス監督の作品。

『憐れみの3章』、本映画は、1本の映画が全く異なる3つの完結したストーリーで構成され、しかも登場する俳優陣は、エマ・ストーンをはじめ、どの作品も、全て同じ俳優のみで構成されています。

これを聞いただけでも、興味をかきたてられると思うのですが、一つひとつの物語が繋がっているようで繋がっていない?いや、ゆるく繋がっているのか?と、鑑賞しながら思考が混乱し、映画の世界に没頭してしまうことでしょう。まさにこれが、ヨルゴス・ランティモス監督のしてやったり、なのかもしれません。私は完全にやられてしまいました。

ある取材記事の中で、ランティモス監督が「映画を作るなら、観る人の価値観を揺るがすような、観る者によって反応が分かれるようなものを作りたい」と語っているのを目にしました。今、その言葉通りのことが自分の中で起こっている気がしています。

人は物語にふれるとどうしてもそのテーマを探したくなるものですが、1話目のテーマを頭の中で一生懸命絞り出そうとしていると、すぐにまた2つ目の物語がはじまり、それが3話目まで展開していきます。しかもそこにあるのは常識では考えられないような奇天烈な世界観。

©2024 Searchlight Pictures

でも、私たちが送る日常生活においても、時々、なぜこんなことが起こったの⁈と、あっと驚くような事件、ニュースがなくはないのです。

この映画の3つの物語は、どれも確かに奇想天外ではあるのだけれど、「こういうこと、あるかもしれない……」と思わせる何か、現実と非現実の境界線ギリギリのところをついた話であるような気がしてならないのです。

そういったことを観た後もずっと感じさせ、ふとした時に思い出させる映画って本当に少ないような気がします。

またその独特な雰囲気を醸し出す映像の空気と劇中の音楽効果にも注目です。

存在するテーマは人間関係、愛、自由、支配、ルール、信仰……。そして欠かせないのはユーモア。

この映画を観終わった後、暫く経ってもまだその明確なテーマがみつけられない自分がいて、ある意味それはそれで正解な気がしています。

もうひとついえること、それは、そこに登場する俳優陣の演技力あっての作品であるということ。

エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、ホン・チャウ、特にこの4人の、静かで且つ激しくもある複雑怪奇な人間を演じることの難しさたるや、想像に難くありません。

ヨルゴス・ランティモス監督は取材記事の中で、「ユーモアは絶対に必要です。笑いがなければ、正直で重みのある表現はできないと思います。どんなに陰惨な映画でも、ドラマチックな映画でも、ユーモアなしには作れません。この二つの相関が生む矛盾が面白い感情を生み、問題を提起するのです」と語っています。確かに、物語の中にはユーモア、といっても、シュールな笑いがありました。それは、所謂わかりやすい笑いとは全く別のものです。

それを上手く、程よく、表現するのが俳優たちの仕事であり、それができる俳優たちが今回もまた、ヨルゴス・ランティモス監督のもとに集まり、見事にそれを演じきったのです。

©2024 Searchlight Pictures

ランティモス監督はエマ・ストーンとの仕事について、こう語っています。「私たちはただただ相性が良く、一緒に仕事をすることは苦にならないのです。私たちは今の経験を積み重ねて行き、何かを作る度に、更に上を目指すことができるのです。ただシンプルに、一緒に仕事をすることが好きなのです」と。

つまりこの作品は、これからも続く二人の関係の一過程に過ぎず、これからも映画ファンを驚かせる作品を世に送り出す、という強いメッセージとも受けとれます。本当にワクワクしますね。

ぜひ皆様、この秋公開の映画、『憐れみの3章』をお楽しみに!

最後に、私はこう予言します。この映画を観終わったらきっと、お洒落な大人のBARでノンアルコールカクテルを飲みながら、物思いにふけりたくなることでしょう、と。

なぜノンアルかって?それは、映画の第1章を観ればきっとわかるはず……。

やっぱり、大人って最高です(笑)。

『憐れみの3章』公式サイトはこちら

『憐れみの3章』関連ニュース①はこちら

『憐れみの3章』関連ニュース②はこちら