2021年1月7日。作者である井上雄彦さんご本人のTwitterで『SLAM DUNK』の映画化が発表され、日本、そして世界中のファンから喜びの声が上がった。勿論、私もその一人である。
【スラムダンク】
— 井上雄彦 Inoue Takehiko (@inouetake) January 7, 2021
映画になります!#slamdunkmovie pic.twitter.com/jWqvCnASxj
漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』といえば、それを読んだことがなくても、タイトルは耳にしたことがある、という人が殆どではなかろうか。こと、90年代に青春真っ盛りの時を過ごした層にとっては、そのタイルを聞いて、「週刊少年ジャンプ」の発売日、あの心躍らせた朝のことを懐かしく思うかもしれない。
そう、漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』は、多くの人の青春時代をつくった漫画作品のひとつであることは間違いなく、後に、「英語・中国語・スペイン語・韓国語」にも翻訳され、海を越えて愛される作品となった。
バスケットボールのプレーで、リングにダイレクトにボールを放り込むダンクシュート。スラムダンクとは、そんなダンクシュートの中でも、相手チームのディフェンスがリングのまわりにいない状況の中でシューターはリングに向かって高く飛び、力強くダイレクトにシュートする。決めた後、まるでその余韻を楽しむかのように、リングにぶら下がるという見せ場をつくるプレーヤーも多い。
言うまでもなく、とにかく華やかで強烈なインパクトを与えるスラムダンクは、「覇者は俺だ!」と言わんばかりのプレーで、成功したらさぞかし気持ちが良いだろうと想像がつく。そして、そんなプレーをできるのは、バスケットをやっている人でもごく一部なのだろうが、それが意外に観ていると簡単そうにもみえ、「うゎ、カッコいい!俺もやってみてぇ!」などと思って、バスケット部のドアを叩く人もきっといるだろう。
余談だが、こうして、文字で、言葉でスラムダンクの説明をしていると、漫画というものがとても羨ましくなってしまう。
なぜなら、その臨場感、その高揚感、を文字だけで伝えるのはとても難しいからだ。
漫画ならむしろ文字などいらない。絵だけでそれを伝えられるのだから。
実際、スラムダンクの最終巻(31巻)は、その殆どを絵で占めている。もはや言葉などいらない圧倒的な世界感がそこにはあるのだ。
また、素人目にも、回を追う毎に絵が上手くなっているのがわかり、そういうちょっと斜め目線で楽しむのにも悪くない作品だと私は思う。
思えば、自分のことを含め、2020年、「鬼滅の刃」の大ヒットにより、これまで漫画やアニメから少し遠のいていた大人が再びその世界へ巻き込まれてしまった。
そして、巻き込まれたついでに、30年の時を超え、映画化されることとなった『SLAM DUNK(スラムダンク)』に再び心躍らせている私は、全巻を読み直し、「やっぱり、スポコンものって普遍だ。大好きだー!」と再確認するとともに、今のように携帯電話がまだ一般的ではない時代、男子高校生が合宿所の呼び出し電話でドキドキしながら意中の女の子と電話で話すシーンなどを目にすると、「これ、そのまんま映画化するのかな?そこは現代ふうにアレンジするのか?」と、その時代背景にも想いを巡らせ、もういろいろな意味で、映画化が楽しみで仕方がないのである。
好みの男子は誰?甲乙つけ難い魅力溢れる登場人物たち。
きっと当時『SLAM DUNK』を読んでいる女子の間では、そこに登場する登場人物たちを話題にあげて、やれ、彼氏にしたいのは流川君、友達なら桜木君よね、などと勝手なことを言いながら盛り上がっていたことだろう。
私の場合、一番好きなのは今も昔も変わらず、やっぱり主人公、「桜木花道(さくらぎはなみち)」という俺様体質で真っ赤な髪色をした高校一年生の男子なのだが、正直、3巻くらいまでは、「あれ?これってヤンキー漫画だっけ?」と思わせるくらいの描き方がされている。
また、好きな女の子にモテたいという理由だけでバスケ部に入部するという、高校生らしい単純明快なところも、「やっぱり、男子はこれくらいわかりやすい方がいいわ♡」などと、ページを捲るとすっかり自分の歳を忘れ、すぐに漫画の世界に入り込むことができるから不思議なものだ。だた、新しい感覚として、「もし息子にするなら宮城リョータがいいな」と、息子というカテゴリーがひとつ増えたことは、すっかり自分が彼らの親世代になってしまった今だから生まれる感情だとも思う。
まぁ、理屈はさておき、ともかく、30年の時を超えた今読んでいても、とても楽しい作品であることは間違いない。
ぜひ、『SLAM DUNK』を知らない世代にも映画になる前に読んでみて欲しい。
私が思う『SLAM DUNK』のすごいところ。
スポコン漫画もいろいろあるが、私が思う、他の作品と『SLAM DUNK』の大きな違いは、主人公とその他の登場人物のバックグラウンドが殆ど描かれていないところにあるように思う。
例えば、よくあるのは、家が貧乏、両親が不仲で家庭環境に恵まれていない、親が幼い時に亡くなってしまった等で、そういう運命を背負った主人公が途中、怪我などに苦しめられながらも、最終的に努力と根性で成功していく姿を描くというものだ。
しかし、『SLAM DUNK』においては、そういった要素がなく、ただただ、バスケットが好きという高校生たちのドラマを描いていて、だからこそ、ダイレクトにバスケットボールというスポーツの面白さが伝わってくるのではないかと思う。
裏を返せばそういう要素がないのに、多くの読者に感情移入させることができること自体が本当にすごいことであるとも思う。事実、この漫画が発売されたことにより、日本におけるバスケットファンの人口が急激に増えたのだから。
唯一、共感ポイントをあげるとしたら、主人公の桜木花道が全くモテない男子で、女子にフラれまくっている、というところに微笑ましい共感が生まれ、でもバスケットを通して、他の誰よりも男らしく強いメンタルをみせてくれている、というところが最高の読みどころと言っても過言ではない。
人の生き方として、本当のかっこ良さを教えてくれているようにも思う。
「叩けよさらば開かれん」ということを。
終わり方も絶妙で……。
さて、どんな物語にも終わりがある。当然のことながら、読み進めていくうちに、果たしてどんな結末を迎えるのか?!ということが気になって仕方がなくなるというのが読者の心理であり、こんなふうに終わって欲しい、というストーリーを自分の頭でも予想し、その通りに完結してスッキリと終われたり、予想が外れたりして、モヤっとした気持ちで終わることだってある。どちらかというと私の場合、漫画はスッキリ終わり、小説はモヤっと終わる、というのがこれまで読んできた作品として多い気がする。
では、『SLAM DUNK』はどうか……。
それについてはきっと、多くの読者が同じ気持ちなんじゃなかろうかと思うのだが、「えっ!そこで終わるの~!もっといくらでも、どうにでも先が描けるじゃ~~~ん!」と思ってしまうのだ。
今回改めて、1巻から31巻を31日かけて丁寧に読み、(※1日1冊しか読んではいけないと、自分にルールを課して読み進めていった。)やっぱり、最後には昔読んだ時と同じような気持ちになった。続きが読みたいと……。
しかしその一方で、大人になった私は、作家さんはきっとこの時この絵を描きながら、そしてストーリーを描きながら、ここで桜木花道をはじめ、そこに登場する魅力的な人たちとさようならをしなければならない、それは作家としてはとても寂しいことではあるけれど、そこには安堵の気持ちもあり、そういう選択をしなければならないと思ったのかもしれないとも感じた。
最終巻、本当に渾身、満身という言葉がふさわしい絵が描かれていて、息が詰まるような思いとともにページを捲っていった。
表紙カバーの内側に、作者のコメントが毎巻書いてあるのだが、最終巻のそこには、
「6年もやったのに、結局作中では4カ月しかすすまなかったな…。ひとまずここで終わります。最終巻までつきあってくれてどうもありがとう。さーて、本を読んで映画を観てビデオを見てバスケみてバスケやって旅に出て……やることが多いぞこれから。」と記してあった。
確かにそうだ。6年かけて(「週刊少年ジャンプ」にて、1990年から1996年にかけて全276話にわたり連載された。)濃密な高校生の4カ月が描かれている。
読み終わり、最終巻のページを閉じると、「桜木花道は、流川楓はあれからどうなって、どんな大人になり、どんな人生を歩んでいるのかな…」と想像する楽しさを残してくれている。
映画はいつ公開?
映画化が発表され、ティザーサイトがオープンした。(https://slamdunk-movie.jp/)これ以外の情報はまだ何もない。
公開日が決まっていたら、「●●●●年、夏、公開決定!」などとざっくりとした季節だけでも発表されることが多いがそれもまだない、ということは、早くても来年(2022年)の夏くらいかな?などと予測している。
既に、過去にテレビアニメ化、映画化された時(映画オリジナルストーリーで、4回映画化されている。)と同じ声優さんが演じるのか?など、ファンの間では盛り上がっている。
これからの公開情報を楽しみに待ちたい。
【『SLAM DUNK(スラムダンク)』についての情報】
★映画ティザーサイト
★映画専用Twitter
★作家「井上雄彦 Inoue Takehiko」さんのTwitter
★スラムダンク奨学金HP