【連載×ますだあけみ】田舎の長男、結婚の高いハードルという現実

『国際結婚救助隊』隊長のあけさんです。

名古屋で結婚相談所を始めて12年目。以前は日本人同士の恋愛相談や婚活スクール、お見合を行っていましたが、4年前から東南アジアの女子達とのご縁を繋げて国際結婚のお手伝いをしています。

本エッセイでは、日本人同士では気付かなかった目線でのエピソードなどをお伝えしています。

季節の変わり目のせいもあって、夫はここ2、3週間、体調不良だとこぼします。部署が変わり、歓送迎会や飲み会が続き、深夜の帰宅をして熟睡できないまま翌日は仕事へ、二日酔いのまま午前中をやり過ごし、仕事は次々とあるから残業し、疲れが取れない同じ繰り返しの毎日。発熱はないけれど喉に痛みがあり、唾をのみ込むのも痛い。(インフルエンザでもコロナでもない、実はいびきが原因)同じ年の知人に咽頭がんが見つかり、自分も心配でたまらない様子……。歯の詰め物が取れて、歯医者に駆けこむと奥歯が痛くて片側で噛んでいてうまく噛めないし、固いものが食べられず……。デスクワークで腰は痛いし、眼は老眼が入ってきて焦点を合わせられなくってきている。もうズタボロ状態なのに会社は休めないという。じゃあ休日にのんびりすればいいのにと思うけれど、ゴルフや予定があって出掛けていき、身体や心身の不調の愚痴を私にこぼすのです。聞いているこちらが、体調不良になりそうです。

世間で働く会社員はそういうものなのかもしれないと、自営業の私は聞き流すことにしているのですが、自分のご機嫌や体の調整をとれないとなると、人生を無駄に過ごしているような気がしてしまいます。何よりも、今までの自分と日に日に違っていく“老化”というものを、受け入れていかないといけないことに、46歳の夫はまだ気付いていなのでしょう。

国際結婚の仲介をしていて日々感じるのは、自分の条件ばかりを言ってくる人が多いということです。子ども希望、田舎の古い家屋での同居希望、農業や自営を手伝ってほしい、和食を作ってほしい、日本語ができる外国人、運転免許を持っている人、見た目が日本人に近い人、自分の家族を大切にしてくれる人、子どもが生まれたら読み聞かせをしてくれる人…等々、よくここまで自己都合な条件があるなと思います。また、本人たちは、婚活がうまくいかない理由をわかっておらず、それが一番イタイとも思います。

この男性があげた条件に、女子が喜んでお嫁に行くと思っているのでしょうか?40、50代になっても親にパンツを洗ってもらい、ご飯を作ってもらい、一度も家から出たことがないのだから仕方ないではすまされないと思うのです。

毎回私は”嫁”側の立場として、こういう勝手な考えに怒りの沸点がMAXになっていたのですが、ふとある話から、考え方を修正してみることにしました。

それは一度”長男”側に立ってみたのです。長男は同居に跡継ぎ、墓守りは絶対のフルコースで、今ある先祖代々の家や墓や土地を守ることが当たり前なのだと言います。なぜそこまで”家系”を存続したいのかが、いつも疑問だったのです。幼少期から長男だからと呪縛のように親や親戚一同から家系存続を擦り込まれ、無意識のうちに第一条件は家の存続になってしまっているのかもしれません。たまたま聞いた家系図の話も、この跡継ぎ問題とリンクしたのでした。(家系図のお話はまた来月させてもらます)

先日のこと、100歳で亡くなった義祖母の三回忌と義祖父の二十七回忌があり、兄弟親戚従姉妹甥姪が一堂に集まりました。今までは夫側の親戚だからとあまり深くかかわらないスタンスでいましたが、次の長男の嫁として、ふと義祖父母の結婚やその上の代の親の話、仕事や当時の生活を聞きたくなり、よい機会だったので、今生きている元気な叔父や叔母に直接聞いてみることにしました。すると、今まで知らなかった話や戦時下のこと、仕事のこと、人間関係のことなどを再認識でき、この家に私が嫁いできたことには実は『縁』があり、その『縁』を繋いでいくことで、またこれからの繋がりがみえたように思え、この家族の一員になれたことが、奇跡のようなことであると自然に思えたのでした。

自分を含め誰にも必ず親がいて、親にはまた親がいて、そのまた親には親がいて……親子を繰り返して続いている。続いているからこそ今の私がある。わかりきったことだけれど、このつなぎ目を自分の代で無くすことはできないと、DNAに深く刻み込まれ、先祖が全力で応援しているように思えたのです。

しかし、この家の存続の全責任を私の一人息子に託すつもりは全くないのです。そもそも嫁いだ家系は本家ではなく、分家であり、分家がどんどん広がっていったのです。途中、養子さんにきてもらうことや、女系一家で夫側と仲良くしている家もありました。これは単に名前を残すということではなく、まずは夫婦が仲良く暮らし、兄弟姉妹や甥や姪、人が人と一緒になり繋がり続いていくことに何とも言えない神秘を感じたのでした。

長男の気持ちが少しわかったところで、嫁側からの意見があります。家系の存続はわかりますが、それに対して同居や年下妻、容姿や年齢は関係ないと思いませんか?それよりも、長男だけに重圧をかけず、次男三男が結婚していて仲良く暮らしている場合には、諸々の権限を次男三男に譲るという決断や、男側が婿養子に入って、相手の家の繁栄の為に動くことも大いにアリだと思います。

家問題はとても深い問題ですが、もっと心を広くして、優しい目でみたらいいのではないかと思います。なんて、いろいろ考えを巡らせていたら、私自身も最近体調不良だとこぼす長男(我が夫)に対して、少し優しくしようと思いました。