【根津孝子×エッセイ】2025年2月14日(金)公開映画『ドライブ・イン・マンハッタン』~I love youと言ってはいけない?~

1月がやっと終わります……。今年の1月はなんだかやたら長く感じました。おそらく毎日同じようなニュースが流れ、時が止まっているような気がするのと、自分の意思は一先ずどこかへ置いておき、日々、流れに身を任せているからかもしれません。

でもこうして流されているうちに、やりたいこと、やるべきことがはっきりみえてくるタイプなので、物理的な時間の使い方としては、今は流されていてもOKな時期なのだと納得して過ごしています。

精神的な部分ではどうでしょう?できればいつも柳のようにゆ~らゆ~ら生きていたいですが、そうばかりもいきません。決める時は決めなければいけませんし、人と関わるといろんなことが起こります。

人と関わる時には、先を読む想像力とそれ相応な覚悟が必要であると、改めて思う今日この頃です。

さて、今日はそんなことを最近思っていたら、なんてタイムリーなストーリーなのだろうという映画に出会ったのでご紹介させて頂きます。

タイトルは、『ドライブ・イン・マンハッタン』。

愛に悩む女と愛に後悔するタクシードライバー。もう二度と会わない二人だから話せる秘密の会話。一夜限りのドライブが人生を変えるストーリー。

2025年2月14日(金)全国公開の話題作です。

●真夜中のタクシー。ワンシチュエーションでの二人の会話劇。

W主演を果たしたのは、ダコタ・ジョンソン/Dakota Johnson(35)と、言わずと知れた、アカデミー賞Ⓡ俳優のショーン・ペン/Sean Penn(64)。

なんとこの二人、映画共演の前から年の離れた友人だったのだそう。

ダコタ・ジョンソンといえば、官能恋愛映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」で主演を演じ、ハリウッド女優として一躍有名になりました。

私はその映画を観た時、女子大生という役柄だからなのか、とても美しいのだけれど、反面、どこにでもいそうな真面目で庶民的な雰囲気を強く感じ、未完成で危うい女性の、ふわっとした雰囲気がとても印象的でした。

それから約10年が経過し、歳を重ねたダコタ・ジョンソン。本映画の年齢設定は、おそらく20代後半なのですが、その美しさに大人の磨きがかかると同時に、やっぱりダコタ・ジョンソンは、どこにでもいそうな20代後半~実年齢である30代半ばくらいの、ふわっとした女性特有の危うさを持つ女性にみえました。

舞台脚本から映画化された作品なので、年齢設定を変えることはしていないのだと思いますが、人間の機微を扱うストーリーと、ダコタ・ジョンソンの超ナチュラルな色っぽさは、実年齢くらいの設定の方がもっとしっくりくるのではないかと個人的には感じました。

女優さんって本当にどこまでが素材で、どこまでが演技力なのだろう?と思わせるくらいに、言葉なしに、目の動きや口元のちょっとしたしぐさだけで、その感情を理解できます。

それが完全に計算された演技なのだとしたら、芝居ってほんと、凄いですよね。そういう部分もこの映画の見どころです。

とても不謹慎かもしれませんが、劇中のダコタ・ジョンソンが演じる女性は、おそらくこの世の男性のほとんどが好きでしょうし、できればあんな女性と関係を持ちたい、そして僕でもいけるかもしれない?という妄想を膨らませることでしょう。官能的なラブシーン以上にある意味とても官能的な女性を演じています。

でもかといって女性側からすると、あざとさや変ないやらしさはなく、それはなぜかというと、そこには感情をゆさぶられる物語がきちんと存在しているからであり、観終わった後は、その物語の印象が一番強く、女として、人として強く生きるための教訓めいたものを多大に心に残します。

●ショーン・ペン演じるタクシードライバー。その人が語ること……。

そして、もう一人の主役、ショーン・ペン。様々な経験をしたであろうその表情に深く入った皺と、その表情をもって語られる言葉は、セリフを超え、嘘がなく、その全てが芯をついていて、女性としてはちょっと苦しくなってしまうとともに、その納得感は物語の領域を超えてきます。

語りながら、その瞳から流れそうで流れない潤んだ瞳は流石の演技。とても印象的です。

またその風貌もいかにもイエローキャブの運転手らしく、リアリティに溢れています。

私がひとつ驚いたのは、舞台は現在のアメリカ、ニューヨーク、マンハッタン。誰もが知る考え方も生き方も世界の最先端を行く場所であっても、そこにあるのは変わらない男性観、女性観、人生観であること。そしてそれこそが現実なのだなと。

映画ではありえないと言ってもいい、狭いタクシー内の空間で、ほぼ100%展開する二人芝居に、世界は広く、表面的にはどんどん変化しているようにみえていても、まるでその狭いタクシーの空間と同じように変わらない人の概念は、この先もずっと存在し続けるのだろうと、そんなことを感じさせる映画でした。

時も時、男って……、女って……、社会って……、人生って……と、自問自答する100分にきっとなることでしょう。


【映画情報】

タイトル:『ドライブ・イン・マンハッタン』

公開日:2月14日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開

© 2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.

監督・脚本:クリスティ・ホール

撮影:フェドン・パパマイケル

出演:ダコタ・ジョンソン ショーン・ペン

公式サイト:https://dim-movie.com

2023年/アメリカ/英語/100分/シネスコ/5.1ch/カラー/原題:Daddio/日本語字幕:神田直美/配給:東京テアトル/提供:東北新社