Story 足立和也(カヌースラローム)が東京五輪行きの切符を勝ち取るまで ~見習うべきその突破力~

Beauty Museumライターの根津孝子です。

まずは、上記にあるカヌースラローム 「カヤックシングル」日本代表、足立和也選手のYouTubeチャンネルをぜひご覧下さい!

百聞は一見に如かず、とはいいますが、動画を観て、既に足立選手の魅力を存分に感じた方もたくさんいらっしゃることでしょう。

さて、新型コロナウィスルの感染拡大により、2020年に行なわれるはずだった東京オリンピック・パラリンピックが1年延期されたことはご存知の通りかと思います。

未だ内定者が決まっていない競技も沢山ある中、その日が来るまで、各選手のみなさんは悲喜交々の想いとともに、今この時を過ごしていらっしゃることでしょう。

そんな中、既に昨年、10月18~20日に行われた「東京オリンピック カヌースラローム競技日本代表選手最終選考会 兼 第42回NHK杯 国際カヌースラローム競技大会」にて、東京五輪出場選手に決定している足立和也選手に、現在の想いと、東京五輪への切符を手にするまでの沢山のエピソードを聞かせて頂きました。

カヌースラロームの選手といえば、リオ五輪で銅メダルに輝いた羽根田卓也選手を思い浮かべる人が多いかもしれません。

カヌー競技には様々な種類があり、足立選手の競技は「カヤックシングル」といって、パドルのブレード(水かき)が両方についており、羽根田選手の競技は「カナディアンシングル」といって、片方だけにブレードが付いている、別の競技です。

(※東京五輪にてこの2つの競技は、「葛西カヌー・スラロームセンター」にて行われます。)

羽根田卓也選手(左)と足立和也選手(右)

私はこれまで、度々その練習や試合を観る機会に恵まれたのですが、まずその清々しくダイナミックなカヌー競技の風景に、すっかり心を奪われてしまいました。

余談ですが、カヌー選手は皆、そのカラダつきがとても美しいのです!これは男女ともに共通することで、その理想的な肉体美を眺めていると本当に羨ましくなります。

暑い季節だと、男子選手は水からあがると、ウエットスーツの上半身を脱いで裸なっていることも多く、その筋肉美に、思わずうっとり(笑)。

“カヌ女”と呼ばれる、競技会場で熱い声援を送る“カヌー好き女子”が近年急激に増えている要因のひとつもそこにあるのかもしれません。

とにかく、カヌーの選手は、競技中は凛々しく、また水の息づかいを読む、という繊細で知的な雰囲気も漂わせつつ、水からあがるとその肉体美を惜しげもなく披露(本人たちは無意識だと思いますが)、そして実際に話してみると、爽やかで礼儀正しい選手たちばかり。

そんなカヌーの世界へ、ぜひみなさんも足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

足立選手にとっては、東京五輪が初のオリンピック。どんなお話が飛び出すのでしょうか。

実は、その爽やかな表情と優しい笑顔からは想像もつかないくらい、これまでの道のりは試練の連続だったようで……。


お金がない中で、コーチ(市場コーチ)と二人三脚で練習に打ち込んだ日々。

ここまでに至る貧乏エピソードなら山ほどありますよ(笑)。

僕がカヌーを始めたのは小学生の頃で、幸い、良い成績も残せていたので、早い段階で、プロになると決めたんですが、本当にカヌーで食べていけるのか?という先が見えない闇の中を漕いでいた時期もありました。

ちょうど闇の中にいたその頃、世界選手権に出たら負けてしまって……。逆にそれで奮起できたというか、将来への不安より、負けた悔しさの方が自分の中で勝ったんです。そこで腹が決まりました。この世界で生きて行くんだと。

そうして、コーチ(市場コーチ)の古いアパートに転がり込んで、一心不乱にカヌーに打ち込みました。でも当時の僕は、最低限の生活費もなく、よい練習環境もない、という状況でした。

市場コーチと暮らした思い出の古いアパート

体重が64キロだったんですが、カヌーのスピードをあげるために、70キロまで体重をあげなくてはいけなくて……。お金がないもんだから、バイト先の食堂からお米をもらって、おかずは毎日スパゲティとじゃがいもでしたね(笑)。服装もそうです。企業に所属している選手とか、裕福な選手も多くて、外食やおしゃれな恰好をする選手も沢山いる中で、僕は、関係者からもらった同じジャンバーを何年も着ていました。

貧乏自慢みたいになっちゃいますけど、日本選手権で優勝した時、会場の屋台で売っている100円のフランクフルトも買えないくらいだったんですよ(笑)。だけど気持ちは前向きでした。もちろん、お金がない、というのもそうですが、ここでフランクフルトに100円を使うなら、3個100円のジャガイモを買って、エネルギーに変えた方がいい!と思っていましたね。

自分の武器をつくることで突破。世界を視野に!

カヌーの選手は、海外に出ないと強くなれないという定説がある中、自分にはそのチャンスもなく、正直、悩んだ時期もありました。でも諦める気はなかったです。まずは、世界と戦える選手になるために、この日本で自分の武器をつくろうと決めました。

自分の武器、それは、「真っ直ぐ」のスピードです。「真っ直ぐ」を磨き、極めるために、コーチ(市場コーチ)と相談しながら、練習内容もガラリと変えました。

驚かれるかもしれませんが、何もない、阿武川(山口県)の敷地エリアに、阿武川ダムの放流時間に合わせてレーニングするために、大量の石を組みなおして、コースを自分で作ったんです。ダムから水が放流されると強い流れが起こって、その場所が最高の練習コースになってくれました。

カヌー選手の中でも、自分で石を積んで練習コースを作った選手はいないかもしれませんね!

今の僕には、ゼロからの環境でのスタートから、世界の舞台で日の丸を背負って戦うところまで来ることができた、という目に見えない自信がある。全ての経験がプラスになっていると思います。

リオ五輪の出場を逃したから強くなれた。コーチ(市場コーチ)の言葉が僕を救った。

実は一度「限界かもしれない」と思ったことがあります。それは、期待されていたリオ五輪の出場を逃した時です。あの時はほんと地獄でした。そこから4年先の東京が考えられなくなっていました。(実際、お好み焼き屋を海外でやろうかと本気で考え、関係者の間で心配されていたという。)

でもそんな時もコーチ(市場コーチ)は沢山の言葉を僕にくれました。「なぜカヌーを始めたのか?」「世界で勝つんじゃなかったのか?」「オリンピックに出たいんじゃないのか?」「一緒に東京五輪に向けてやりなおそう」「挑戦しつづけよう」……。

足立選手(左)と市場コーチ(右)

その言葉を胸に奮起し、決死のトレーニングを再開しました。すると結果はついてきました。2016年の世界大会(W杯スロバキア)で、日本人で初めてメダル(銅)をとることができたんです。

今では笑い話ですが、コーチ(市場コーチ)と二人、試合の帰りに「こういう時って打ち上げするもんでしょう?」と、スーパーに立ち寄って安いスパークリングワインを買って帰りました。結局、飲まずに疲れて寝てしまったのですが(笑)。

市場コーチ(左)と足立選手(右)

Made in Japanで勝負する!僕はMade in Japanの選手。

それから、自慢したいことがあります。それは、僕のボートは日本製、ということです。オリンピック出場選手の中で、日本製のボートを使っているのは僕だけです。F1にも携わっていた風洞研究のボディーメーカーと組んで、世界制覇に挑戦します!

また、多くの選手たちが、カヌー競技の環境が整っている海外で活動をする中、僕は、日本国内でトレーニングをすることにもこだわっています。

もちろん資金的なこともありますが、それ以上に、子どもたちやこれからの選手へ向けて、海外に行かなくても世界のレベルで闘える選手が国内でも育つ、ということをみてもらいたいと、それが僕の役目であると思うからです。

カヌーはとても楽しいスポーツです。それを知って欲しいですし、もっと身近に感じて欲しいですね。

今、どんな毎日を過ごしているのか?東京五輪へ向けての意気込みは?

この状況ですし(新型コロナウィルスの世界的感染拡大)、延期になったのは仕方がないと、すぐに気持ちを切り替えました。幸い僕の場合、五輪出場が決定しているので、むしろここから一年かけて更に磨きをかけることができる、と前向きに捉えています。

とはいえ、ライバル選手たちも皆、今同じ気持ちでいると思いますので、常に彼らのことを想像しながら、研究しながら、勝つための準備を進めています。

最近はオリジナルのトレーニングもスタートさせました。具体的ですか?今はヒミツにしておきます。メダルを取った時にお話しますよ!応援、宜しくお願いします!

市場コーチが語る、足立選手の最大の魅力。

私が専属コーチとして思う、足立のカヌー競技者としての一番の魅力は、身体の動きの速さです。初めて漕いでいる姿をみた時に、“こいつは凄くいい選手になる”と直感的に感じました。(実際、足立選手は、子どもの頃から、カヌー以外のスポーツも何でも上手だった。)

足立くらい身体能力の高さがある選手は珍しいです。ある意味羨ましいですね(笑)。

とにかく漕いでいる姿をみてもらうとわかるのですが、華やかで力強い、観客が楽しめるレースを展開してくれます。

東京五輪まで二人三脚です。2人で何としてもメダルを狙います!

貧乏時代の話が出ましたが、そういう時代があったから、メンタルタフネスな選手に成長できたと思いますね。フィジカルとメンタルの両方を鍛えるために、必要な時間だったと思います。

メダルを期待していて下さい!応援、宜しくお願いします。

足立選手(左)と市場コーチ(右)は、二人三脚で五輪のメダルを狙う!

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