【エッセイ×根津孝子】ゆく年くる年~ウィッシュ(wish)の響きがちょっと苦しいお年頃~ 

年の瀬ですね。年末年始はやっぱり非日常的な風景や時間がそこら中に沢山あるので、いつもせわしなく動いていたいタイプの私にとっては、勝手に目の前の景色がガラリと変わっていく好きな時間です。

特に三が日は、おせちなど一年に一度しか食べないような、珍しくて美味しいものをたらふく食べられますしね。

欲にもいろいろありますが、何だかんだ言っても結局のところ最近の私は、好きなもの、美味しいものを食べている時が一番幸せを感じます。まぁ、そういう歳になったということなのかもしれません。物より食、みたいな……。実際、他の欲より満たすことも容易ですしね。

今朝のこと、熊本から好物の馬刺しが届きました。故郷の名物です。2023年、やり残したくないリストの中に、「馬刺しを食べる」があったので、取り寄せたのです。冷凍状態で届いたのですが、箱を開け、まずはせっせと冷蔵庫のチルド室へ保存……。箱を空けながら、自然にルンルン♪鼻歌が飛び出していました。下戸なのでお酒は全くの苦手ですが、アツアツの炊きたてのごはんにも、馬刺しは最高に合います。今夜の食卓が楽しみです。

そうですね、もう年々私の幸せのハードルは下がるばかり。ある意味、簡単に心が豊かになれる50代、すてたもんじゃあ、ありません。

2023年、12月23日(土)、土曜版の新聞の一面に、『「リア充」50代絶賛青春中』の文字が踊っていました。

「リア充?50代?」と気になってすぐに読んだのですが、要するに、人生100年時代で50代はまだ折り返し。今、若い時にやりたかった習い事や趣味へ時間やお金をかけて挑戦している50代の人が増え、また、年齢に関係なく世代を超えて一緒に楽しめるオンラインゲームにハマり、更には、R50のマッチングアプリの利用者が、毎月3、4割ペースで増加していて、リア充な50代も増加中なのだそうです。「ほぇ~、ふむふむ……。リア充って言葉、久々に聞いた気もするけど、何事も充実している50代、最高じゃん!」と良い刺激と元気をもらう記事でした。

そんな記事を眺めながら、自身の2023年、行く年を振り返りながら自問自答……。

確かに、この記事の通りとまではいきませんが、私なりに、とても忙しい年でした。

充実というよりはむしろ、忙しいという表現がしっくりくる年でした。沢山お仕事をして沢山お金を稼いだかは全く別の話です。でも私なりに身体も心も脳みそもしっかりと忙しかったのです。そして、できることは全力でやったな、とも思います。

まぁ、全ては自己評価の世界での話……。そして、私の自己評価はいつも高めです。自分に優しく、人にも優しい、そんな大人に私はなりたい(笑)。

振り返ると、やるべきこと、やらなくてはいないことに日々追われた一年だったのですが、でもちゃんと楽しむ時間もありました。忙しい時ってなぜか普段より、より遊びたいという衝動に駆られませんか?私はそうで、よって、隙間時間に楽しむ予定を入れるのですが、楽しい時間を過ごした後は、我ながら時間を上手に使う天才か!と、ここでも自己評価高めを発揮。でも本当にそう思う時があります。

隙間時間の楽しみ方でよくやるのが、映画鑑賞や舞台鑑賞です。特に今年はよく通ったなと思います。中には、繰り返し観た作品もいくつかあります。途中で寝てしまって、内容を殆ど把握できずに終わった作品もあります。でもそれでも無駄だったとは思いません。むしろ、眠気を我慢することもせずに、ぐっすり寝ます(笑)。

じゃあなぜあの時間が好きなのだろう?と思うのですが、旅行も好きで、その理由のひとつに、飛行機に乗るのが好きというのがあるのですが、私の中で、飛行機に乗る感覚と映画や舞台を鑑賞する感覚がすごく似ていて、「この時間、何もできない」という感覚がとても好きなのです。ちょっと大げさな言い方をすると、物理的にも精神的にも俗世間と距離を置く、無力な時間です。

しかし先日のこと、ずっと楽しみにしていて、上映日の初日にディズニー創立100周年記念作、ミュージカルアニメーション「ウィッシュ(wish)」を観た時のこと、ちょっと自分の中に変化を感じました。

ピーターパン症候群という持病を持った私は、無条件にファンタジーの世界は大好き。言うまでもなく、ディズニーの世界観に、これまでもずっと癒されてきました。

けれどもなぜか、「星に願いを、願いは叶う、諦めてはいけない」というディズニー映画の定番であるテーマに胸苦しさを感じてしまって……。私の中の何かが変わってしまっただけで、とてもいい映画だったのですよ、ほんとうに。

映画の帰り道、「リアル世界に塗れて、歳とったな私」と、心の中でぽつんと独り言。

今、ウィッシュ(wish)とか、願いとかいう響きがなんだかとても重く感じてしまうようになっている自分がいます。生きていると、どんなに願っても、努力しても、泣いても、叫んでも、叶わないことの方が圧倒的に多いですよね、実際。

でもそんなことを思った数日後、故郷から好物の馬刺しが届いた時、ルンルン♪と鼻歌を歌っている自分自身に救われたのです。大きなウィッシュ(wish)は難しいけれど、小さなルンルン♪はいつでも自分自身で叶えられるぞ、と。コレ、日にちを指定して、随分前に自分で手配してあったのですが、手配したことを忘れていたのです。だからちょっとしたサプライズでした。(はい、単純。)

単純ではありますが、星は願いを叶えてくれないけれど、自分自身で叶えられることは沢山あるな、と。

来る年は、大きなウィッシュ(wish)は心の片隅にそっとしまっておいて(いつか叶えるという想いはもちろん捨てずにおきたい)、小さなルンルン♪を重ねられる、そんな年にしたいと思っています。

みなさまどうぞ、穏やかなよい年をお迎え下さい。