1+1=2になると思ったらいけない『コラボ』に潜む罠

私の周りで最近よく聞くのが「寂しい」という言葉。彼女が欲しい、彼氏が欲しい、結婚したい…… 一人でいるのが寂しさに耐えられず、寂しさを忘れさせてくれるために誰かを求めているようだ。寂しいと思う人が2人集まれば1+1=2、つまり、1(人)の寂しさは消え2という複数系の別のものになる。それって、とっても自意識過剰な利己的考えではないだろうか。

近年のファッション業界で”大変”流行っている『コラボ(レーション)』。異なるブランドが2つ、もしくは複数集まり、それぞれのアイデンティティや技術、デザインを合わせて1つのものを作るコラボは、消費者の購買意欲を高め、話題性も抜群だ。ルイヴィドンとシュプリームのコラボによるコレクションが記憶に新しい。ルイヴィトンの高い縫製技術がストリートブランドのシュプリームと合わさったとき、どんなものが生まれるのか関心が高まったに違いない。

私自身コラボが決まったときは、どんなものが出来るかすごく気になった。老舗メゾンがラグジュアリーと相反するストリートをどうデザインに落とし込むのか、見てみたい!とワクワクした。

しかし、実際にコレクションが発表されルックをみたとき愕然とした。何がしたいのか分からない、というのが率直な意見だ。ルイヴィトンのモノグラムにシュプリームのブランドカラーである赤とロゴが混ぜ合わせられただけ。なんの捻りもない、退屈なコレクションだと思った。

でも、とっても売れたそうじゃありませんか。後から整理券が配られるほど入手困難で行列ができたとニュースで読んだときは、なんだが悲しくなった。これが意味するのは、1+1=2の方式が証明されたということ。多くの人は1+1=2を信じているのだ。ルイヴィトンとシュプリームが合わされば、ルイヴィトンシュプリームという最強の価値が生まれると思っているということの証明なのだ。

皆んな自意識過剰だ。自分は-1の人間かも知れないのに。自分は気分屋の変数xを持っている訳あり1xの人間かもしれないのに。世の人たちは、とっても”ポジティブ”な思考を持っているのですね!!

私は唱えたい。1+1=2方式は幻想であると!
代わりに推奨したいのは「1x × 1x=?方式」。マイナスも、かければプラスになる。そのほうがよっぽどポジティブじゃありませんか。人が皆弱いところを持っているとするならば(1になりえないとするならば)、それを認めてマイナスをプラスにすればいいのだと思う。コラボもそう。足し算で考えるから単調でつまらなくなる。掛け算ならお互い苦手なところはプラスになり、良いところは増幅され2以上の価値が生まれる。(-2以上になる可能性もあるが…)

しかしながら、世の中の流れを汲み取り足し算で勝負をしかけたルイヴィトンはやはりすごいと思う。マーケティングとリサーチがしっかりできていたということだ。ラグジュアリーブランドはいつでも顧客に夢や憧れを抱かせないといけない。その使命は守り通したのではないだろうか。

文 / RYO KANEKO