【根津孝子×エッセイ】2026年9月18日(金)公開映画『モネと時間旅行』~印象派の巨匠モネ没落100年メモリアルイヤーに贈る~

もう夏は終わってしまったのですね(笑)。いろいろ夏らしいことをするのは諦めているところもあるので、終わってしまった夏を深く惜しむことはないのですが、それにしても今年の夏は熊本の震災に始まり、また夏の終わりからここ数週間にかけて、雨が降れば日本のあちらこちらで水害が起こり、何となく晴れやかな気持ちになれる日が少ないような気がしています。

これ以上被害が広がらないことを願うばかりです。災害が起こる度、個人として、もっとこういう準備や対策が必要だな、と思うこともあります。でもそれを実行しないことの方が正直多いです、私の場合。

しかしそれじゃあダメですね……。心を入れ替ることにします。

個人だけではなく、国や自治体も、災害が起こると、この先起こるかもしれない災害を見越して、こうすることにしました、ああすることにしました、といいます。そういうニュースを目にする度、そんなことができるのであれば、最初からやっておいてほしかった……と思います。

結局、人というのは、懲りて初めて行動を起こすことの方が断然多いということなのでしょう。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の中では、21世紀には時間旅行(タイムトラベル)ができる時代がやってきているはずなのに、現実の時代は追いついていません。災害が起こる度、時間旅行ができればと思うのは、きっと私だけではないでしょう。でもタイムマシーンの発明は私がこの世にいるうちにはきっと無理なのでしょうね……。

© STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

さて、今回ご紹介する映画は『モネと時間旅行』。
デロリアンは出てきませんが、精神的な何かが作用して、限られた人たちが時代を超えた時間旅行を体験します。
公開以来、世界中の人たちが魅了され、250万人動員の大ヒット映画となっています。

●ストーリー

パリで恋に仕事に悩みながら、祖父と暮らすセブ。ある日、面識のない親族一同が集められ、先祖アデルが遺した屋敷を土地開発のために売ってほしいと迫られる。1944年から閉ざされたままの、ノルマンディーの草原に佇む古い一軒家だ。セブを含む4人が一族の代表として、屋敷の調査をすることに。するとそこで、白いドレス姿の女性を描いた、印象派の作品らしき絵画を発見する。屋敷の持ち主である、謎の女性アデルとは?そして、絵画の作者やモデルは一体誰なのか―

© STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

●絵画など、アートに興味がある人もない人も楽しめる

絵画など、アートに興味がない人も、印象派の画家の絵を観たり、印象派を代表するモネの名前をみたり聞いたりしたことはきっとあることでしょう。そもそも、教科書にその絵は必ずのっていました。

私がこの映画をみた印象は、「なんてよくできた映画なんだ!」という称賛でした。また、「もっと知りたい!」という探求心の芽生えが同時にありました。

何がよくできているかというと、まずそのシナリオに引き込まれます。どこまでがリアルでどこまでが作り話かはさておき、とてもとてもよくできたお話……。鑑賞後に、思わずモネについてググりました。それくらい、あとを引くシナリオです。

時を超え、点と点が線になって、明らかにされていくミステリー感もあって終始興味をそそられます。

そして、まるで絵画鑑賞をしているかのような、映像のアート感に没入します。

舞台はパリ。パリの時代を超えても変わらない風景と、逆にとても変化したパリの映像美に驚きます。

© STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

●セドリック・クラピッシュ監督が本作品について語る~描くのはそれぞれの時代が持つ魅力と変化~

今を生きる私たち。例えば、AIを誰もが使える時代になった今でも、「AIって何の役に立つの?」と思っている人が結構多いのではないでしょうか?

監督は、本作品に関わるインタビューの中で、映画というものがこの世に生まれた時もきっとそうであったと語っています。

映画が生まれたパリ。映画って何?どんなものかさっぱりわからない。「何の役に立つの?」そうきっと皆が思っていたと……。

写真を見ると、当時のパリには、まだ野原が広がっています。モンマルトルの北側一帯も、今では想像できないほど牧歌的な田園地帯でした。そして、まさにその時代に映画が誕生したのです、と。

映画は1895年に生まれました。だから私は、この映画で映画そのものの誕生に触れないわけにはいきませんでした。カピュシーヌ大通りのグラン・カフェ……。最初の上映会は、どうしても描きたい出来事でした、とも。

映画の中に出てくる、モネ、ルノワール、セザンヌ、写真家フェリックス・ナダール、作家ヴィクトル・ユゴーたちは皆、未だ無名の芸術家たちです。もちろん、その性格もそれぞれであり、ただ絵を描くことが好きな芸術家もいれば、新しいことにチャレンジする上昇志向の塊のような人もいます。

歴史の始まりはそれぞれ違いますが、絵は何の役に立つの?写真は何の役に立つの?文字は何の役に立つの?きっと何でもはじまりは、そんなふうです。

鑑賞後、私のいる世界、私の時代に戻り、これまで生きてきた50数年のうちにも、「何の役に立つの?」と思うものがこの世に現れ、今では当たり前のようにそこに居座っていたり、また自然に消えていったりもしたな、と思い、なんだか目の前で起こるいろいろ不都合な出来事も、先入観なしにフラットな目でみることが大切だな、と思うようになれたのでした。

そして、生きていること自体が、なんだかとても楽しくなっています。

そう考えると、時を超え、映画は人の役に立っていますね……。

『モネと時間旅行』という映画。

私の中では、エモーショナルな体験を味わえるおすすめの1本に出会えた気分です。ぜひ、ご覧ください。

STUDIOCANAL – COLOURS OF TIME – CE QUI ME MEUT – Emmanuelle Jacobson-Roques

★『モネと時間旅行』公式サイト https://monetojikan.com/