【エッセイ×根津孝子】イタリア旅行記part②ヴェネツィア編~もしも自分がその地に生まれ育ったとして~

イタリア旅行記part①ミラノ編~人が旅をする意味について~はこちら★

私たちはミラノを後にして、水の都、ヴェネツィアへと列車で向かいました。

この旅でこだわったことの一つに、イタリア国内の移動手段に鉄道を使うということがありました。

もしかすると、5人という小さなグループの旅行だったので席の手配もしやすく、実現できたことかもしれませんが、バスで移動するのと、トレニタリアの高速鉄道フレッチャロッサなど、日本でいうところの新幹線で移動するのとでは、かかる時間がぜんぜん違います。

ちなみに、列車だと1日の本数も多く出ていて、ミラノからヴェネツィアへは、乗り換えなしで、2時間半で到着します。バスだと5時間はかかると思っていた方がいいと思います。

実際、「ミラノ→ヴェネツィア(2時間半)」「ヴェネツィア→フィレンツェ(2時間)」「フィレンツェ→ローマ(1時間半)」を全て鉄道で移動したので、バス移動の経験はしていません。

バス移動の良さもきっとあると思いますが、かかる時間だけのことを考えたら、鉄道にしてよかったと思います。

車窓から眺める外の景色は、テレビ番組、「世界の車窓から」のような雰囲気も時折あり、番組のテーマソングが頭の中を流れていました。(いや、頭の中だけでなく、陽気な旅仲間と鼻歌を唄ったのはここだけの話。)

到着が近づくと海の向こうにヴェネツィアが見えてきます。

●ぱっと見だけじゃない、深い歴史とそこにある生活こそ「ヴェネツィア」の魅力。

これまで旅番組などで幾度となくヴェネツィアの映像や写真をみたことはありました。また、行ったことがある人からは、「まるでディズニーシーみたいだよ」という話もよく聞きます。

そうですね、駅を出るとすぐに広がるその非現実的な世界。そう感じずにはいられません。勿論、その面積の違いはありますが、ある意味、ディズニーシーの再現力に驚くくらいです。

ヴェネツィア・サンタ・ルチーア駅に到着すると自分たちだけでホテルへ移動することになっていて、旅程表をみていただけだと、大丈夫かな?と不安もありましたが、目の前に船上タクシーの乗り場があって迷うことはありませんでした。

水路を使ってホテルへと移動します。ヴェネツィアでは車を1台もみることがありません。

陸の移動は徒歩。距離のある移動は水路のみで、船上バスか船上タクシーで移動します。

このどこまでも続く絵のような景色に、その場に立っていても「噓でしょ?」と言いたくなるくらいのビックリ感がありましたが、それはぱっと見の話。

これが現実の世界であり、ちゃんとした生活がそこにはあります。

陸に上がると、小さな路地や小さな橋が沢山あって、どこまでも続く石畳の道は趣もありますが、足への負担もあり……。これが毎日の生活か、と思うとちょっと複雑な気持ちにもなって、「もし自分が、この地でに生まれ育ったとしたら、どんな生活をしている?どんな仕事をしたい?」など、旅仲間と空想の話題に華が咲きました。

●サンマルコ寺院とその周辺は、ヴェネツィアが繁栄した中世へタイムスリップしたかのよう。

続く細い路地。路地を抜けると広がる非現実的な美しい景色。まずそのぱっと見に魅了されてしまうヴェネツィアですが、サンマルコ寺院やその周りを囲む博物館、アカデミア美術館で歴史に触れて本物を目の当たりにすると、中世イタリアを代表する海運王国として、ヴェネツィアがいかに栄えた王国であったかということを知ることができます。

イタリアは現在も正式名称がイタリア共和国ということからもわかるように、1861年に統一されるまで、それぞれが独立した王国として存在していました。

そんな中でも海に面した立地を生かした海運で栄えた王国の一つがヴェネツィア王国です。

サンマルコ寺院の中や博物館に展示された十字軍の戦利品の数々は、迫力があり、その英華を象徴しているようにみえました。

広場には、ヨーロッパで初めてcaféと呼ばれるお店ができ、そのお店が現在も営業しています。生演奏を聴きながら楽しむことができるのですが、中世の人たちが豪華な洋服を着てこの席に座り、この同じ景色を眺めながら会話とお茶を楽しんでいたのかと思うと、とても不思議な気持ちになりました。

●ヴェネツィアンガラスの工房へ

ヴェネツィアといえば、ヴェネツィアンガラスがとても有名ですが、石畳の路地を歩いていると、ヴェネツィアンガラスのお店が沢山あります。

私たちは、サンマルコ広場のすぐ近くにある、工房を訪ねました。

その工程などを見学し、お話を聴いて、華やかで繊細にみえていたヴェネツィアンガラスが、意外なことにとても丈夫で日常使いに適していることを知りました。

●観光の最後はゴンドラに乗って……。

ゴンドラはやっぱり外せないね、と皆で乗船……。水路をぐるっとまわって、30分程度で下船します。ゴンドラは観光用の乗り物です。

私たちは、このイタリア旅行で4都市を巡り、それぞれの都市に2泊ずつしました。つまり、ヴェネツィアにも2泊3日の滞在をしたのですが、ヴェネツィアの観光はサンマルコ広場に集中しているので、ヴェネチア滞在中、ホテルから徒歩で何度もその周辺を行き来をしたせいもあって、2泊でしたが、ちょっとそこに暮らしているような感覚にもなりました。

どこかへ旅に出かけ、旅から戻るといつもそうなのですが、「今もあの場所はあんなふうに時間が流れ、あんなふうに生活をしているんだろうな」と想像します。イタリア4都市を巡りましたが、戻って一番そんな想像を巡らせるのはヴェネツィアです。

それくらい、非現実的な世界でもあり、また逆にとても現実的な生活を垣間見た2泊3日の滞在だったからかもしれません。

自分があの地に生まれ育ち、あの地で生涯生活を送るとしたら、どんな生活をし、どんな仕事をしてたかな?まだそんな空想の世界の結論は出ていませんが、暫くはそんな旅の余韻に浸れそうです。

さて、私たちの旅は、次の場所、見どころいっぱいのフィレンツェへと続きます。

どうぞ最後までお付き合い下さい。